錦町
羅漢山は山口県の山々のうちで一番観光化されているといえよう。スキー場やロッジ、観光牧場、登山コース、それにシーズンオフ用にプラスチック製のゲレンデも新設され夏スキーも可能となった。時には貸切バスが入山するのを見かけることがある。
この山の広島県側の山裾を小瀬川が洗い、羅漢渓谷と呼ばれているので、宇佐郷側のこの沢の方は、仮に後羅漢沢と言わせてもらうことにする。”後”を付したのは、大原の人々がこの沢を”後川”と呼んでいるからである。
羅漢山は丸っこい山体で、谷もあまり切れ込んでいないので若い山らしく思えるが、なぜか北西斜面だけ沢が深く刻まれている。この後川沿いの沢に、途中まで林道が通じている。この林道は特別のメリットもないのに強行されたらしく、川筋は滅茶苦茶になり、土砂崩れを誘発して新たにセキを設ける必要まで生んで、建設業者を喜ばせたかのようだ。
そのセキの少々上手から、ところどころ素肌らしきものが姿を見せはじめ、滝も含んでいるが、右岸の林道の土砂が押し寄せていて興をそがれる。一番もったいないのが林道の終点の箇所で、そこはやや広い露岩体となっていて、2段の滝がある。そこの右岸がやはり工事の土砂や岩屑でやられている。
また、このあたりの山腹にはシャクナゲの大群落がある。天然記念物指定となっているが、林道が通じたため、車で載りつけて盗掘し、持ち帰る不心得者も現れているようだ。
林道終点に安置してある地蔵様の横を瀬が迸っている。その瀬はナメ状で、そこには支沢が直角に注いでいる。
まず主沢の方をたどってみよう。しばらくは小滝をまじえたナメ床であるが、やがて傾斜がゆるくなり、渓態も平凡化する。
再び両岸が高くなって、やがてF21とF22の滝に出会う。4メートルほどのいい滝である。ここは左岸がオーバーハングとなっているので右岸をアタックする。
ここからF27まではゴルジュ部で、この沢のクライマックスである。露岩の溝状の谷で、小滝と淵の交互した、幽峡である。遡行は見かけほど難しくないが、自信がなければ左岸のやや高い所に杣道が通っていて、たどると杉林の所で沢と接する。
そこで地蔵横に注ぐ支沢と、この主沢とが交差しそうなまでに接近しているので、この部分の低い鞍部を越すと、支沢に移る事ができる。
杉林を過ぎて主沢をさらにたどると、ナメ床上のさわやかな川床が続く。おもしろいのは、それまでの花崗岩の沢床が時々黒っぽいハンレイ岩らしきものにかわる事である。羅漢山の頂上部は蛇紋岩体だが、その事に関係があるのであろう。
沢の行く手に高圧線が近く迫ってきた所あたりが限界で、それから先は転石の多いむさくるしい川床にダウンしてしまう。
この沢の左岸にところどころ小道があり、断続するが、これは昔の参勤の道の名残だそうで、生山峠を経ている。
地蔵下の二段の滝の付近に、三つの支沢があり、いずれもナメ状のきれいな岩床である。そのうちでは前述の支沢が大きく、沢床は主沢より少し劣る。しかし小滝が多く、終末部に犬戻の滝という40メートルの岩壁が立ちはだかっている。
この滝の直登を<杣道>の繩田氏と試みたが、中央部で動きがとれなくなり、なんとか右にそれてことなきを得た。